U216

見える未来そのすべてをまやかしだと拒絶してあげるよ!

ブラック メリーポピンズ再演

観た頃から1ヶ月以上経過しても感想をツイッターの下書きに入れっぱなしだったので流石に今更TL汚すのもあれなので、というわけで久々のはてなです。
以下感想を羅列。



  • 唯一の初参加アンナは幼くもおませな女の子。スモーキーピンクのワンピースを着こなすかわいらしい容姿に反して、歌声は湿り気のある、情の重たい響き。デュエットがなんだか歌謡曲っぽく聞こえるのはちょっと気になる。二人のアンナの持ち味が違っておもしろかったです。正直、個人的には日本のアンナはまだ理想のアンナには出会えてないなー。再々演にも期待。

  • 最も初演と変化を感じたのはヘルマン。女子感たっぷりのしょこアンナを迎え、恋する青年像がより浮き彫りに。アンナと再会したよろこびに溢れているのに、再び彼女に拒絶されることを恐れて近付きたくても近付けず、触れられず。荒っぽい言動の反面の、いじらしい意気地なし。かわいい男になったね…!><

  • デュエットが増えましたし、物語におけるヘルマンアンナの恋の比重が増しました。ヘルマンは優しい少年が粗野なひねくれ者に成長した現実の残酷さを抱えていて、それでいてアンナへの態度は不器用でピュアで…もう、これみんな好きなやつでしょ…

  • 翌日初演を一緒に観たみやしたファンの友人に会い、感想を聞かれて第一声「ヘルマンがめちゃくちゃかわいかった」と答えたらアヲくんがりゅーじをかわいいだなんてそんな…と大層驚かれましたがwそれくらい再演はヘルマン推し。

  • らっちの驚異の童顔力を如何なく発揮出来るヨナスは、より末っ子らしさと狂気を深めて。病んだ芝居は彼の得意分野だと思いますが、白目の大きな瞳がストンと色をなくし、もう動くことのない父へ呼び掛け、兄の腕のなかでぼろぼろ崩壊していく様は背筋を冷やすものと哀れさが綯交ぜの異様さ。

  • 初演より動きの手数が多く激しくなったかな。意味深なところはより意味深く。キーマンらしさが強くなった印象。早くDVDで比較したいな~

  • 流石に5月ではスーツの背を濡らしてなかった(笑)ハンス。それとも対策したのかな?こにたんは周囲の芝居を受けて作るタイプの役者だなぁと思いますが、今作はヨナスの末っ子感が増したので、対となる長兄はより兄らしく。末っ子の頭を撫でる仕草に愛情が見えます。

印象的だったところをいくつか。

  • M3でヘルマンがハンスに食って掛かるターン。ソファに座すハンスの前にヘルマンが椅子を移動させ二人が向き合うかたちになり、対峙する様がより鮮明に。ソファから動かないハンスには頑固さ、椅子から立ち上がって動き回り落ち着かないヘルマンの揺らぎも明確。

  • 罪悪の意識を告白したハンスが近寄ると、ヘルマンとアンナは己の罪悪をも見せつけられたように怯えて目を逸らすけれど、かつて己を必死に守ろうとした兄の記憶の断片を持つヨナスは、おずおずと受け止めるように手を伸ばして、ハンスからそれを拒絶される。胸がぎゅっとなる一瞬。

  • 初演から印象深いのは幕切れ。過去を抱えて生きてゆくことを決めた兄弟たちの催眠が解かれると、終始三方を囲んでいた高く真白い壁が立ち消える。解き放たれた箱庭の周りには鬱蒼とした森の気配が広がり、寄る辺ない瞳の4人とマリーが立ち尽くす。物語はそこで終わり。

  • あのほの暗い森は、単に彼らが共に暮らした屋敷が森の中にぽつんと建っていたという所以か、12年前の殺人事件の容疑者たちが向かうべき償いの場所の暗喩か…何にせよ解放された彼らを取り巻くその先が明るいだけの未来でないことはわかる。


再演もすてきな時間でありました。